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広島高等裁判所岡山支部 昭和62年(行コ)2号 判決

控訴人(原告) 坂本守信

被控訴人(被告) 岡山大学長

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対し昭和四八年五月七日付けでした懲戒処分を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨。

第二当事者の主張

当事者双方の事実上の主張は、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する(但し、原判決一七枚目裏末行「意思」を「意志」と改める。)。

一  当審における控訴人の主張

控訴人の控訴理由は次のとおりであり、その詳細は、別紙一「控訴人の主張」のとおりである。

1  原判決は、裁判官の独立性を放棄した裁判官によってなされており、適法な判決とは到底いえない。

2  原判決は、裁判を為すに熟していない段階でなされており、審理不尽である。

3  原審裁判所は、昭和六一年七月二日の結審後、弁論を再開しなければ手続的正義に反することが明らかであるにもかかわらず、弁論を再開しなかった。

4  原審裁判所は、従前の忌避申立原因とは明らかに異なる忌避原因をもってなされている原告の昭和六二年三月二四日付忌避申立を自ら却下するという違法をなし、さらに右忌避申立についての裁判が確定しない段階で判決言渡しを行うという違法を重ねている。

5  原判決は、証拠の採否および事実認定が被控訴人側に一方的に偏って恣意的になされており、裁判の公正を欠く。

6  原判決は、原告の主張を正しく把握、検討していない。

7  原判決には、事実認定において多くの誤り、遺漏がある。

8  原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令の適用の重大な誤りがある。

9  原判決には、〈大学の自治〉の法律的解釈において重大な誤りがある。

二  当審における被控訴人の主張

1  控訴人の右主張は争う。

2  被控訴人の当審における主張の詳細は別紙二「被控訴人の主張」のとおりである。

第三証拠〈省略〉

理由

一  当裁判所は、控訴人の本訴請求を棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これをここに引用する。

1  原判決三三枚目表一三行目末尾に「(以下これを「処分理由1」という。)」を加え、同三五枚目表四行目「同月」を「同年一〇月」と、同裏九行目「終止」を「終始」と、同三六枚目表六行目「同月」を「同年一一月」と、同三七枚目表九、一〇行目、同裏八行目の各「ビラ」を「書面」と、同一三行目「同月」を「同年一一月」と各改め、同四〇枚目裏四行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「処分理由1につき、控訴人は縷々主張し(別紙一の第二・二・1、第三・一のとおり)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、原判決の趣旨を正解しない控訴人の思い込みや独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、到底右認定判断を左右するに足りない。

因みに、控訴人は、昭和四七年四月の教養部教養係員の発言に関する控訴人の質問状に対する当局の対応を問題にするけれども、仮に控訴人の主張するような問題発言・当局の対応があったとしても、それだからといって、大学及び学生にとって重要な成績判定業務について、「片山恵子」とか“「坂本教官」の〈教務〉係”という奇妙な名称を使用する合理的理由はない。

また、控訴人は、「坂本教官」の〈教務〉係=坂本守信であるというが、大学及び学生にとって重要な成績判定業務について、そのような奇妙な名称を使用することそれ自体国立大学の教官として不適格であるとの誹りを免れない。また、田代教養部長と控訴人との確執について云々する点は、大学の自治の理念のもとにおいて岡山大学の最高機関である評議会を教養部長一人で牛耳ることなどおよそ不可能であって、いずれも控訴人の被害妄想に過ぎないし、出張申請の件についても、公務出張の用件の中に個人で行くべき人事院への出頭が含まれている点をチェックされただけのことであって、厳正であるべき公費の支出についてこの程度のチェックがなされるのは当然であり、何ら怪しむに足りない。」

2  原判決四〇枚目裏六行目の括弧書きの次に「(以下これを「処分理由2」という。)」を加え、同四四枚目裏二行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「処分理由2につき、控訴人は縷々主張し(別紙一の第二・二・2、第三・二のとおり)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、前記同様、原判決の趣旨を正解しない控訴人の思い込みや独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず到底右認定判断を左右するに足りない。」

3  原判決四四枚目裏三行目の括弧書きの次に「(以下これを「処分理由3」という。)」を加え、同九、一〇行目「小松富美代の証言」を「小松富美代、同金本浩一、同小松芳文、同城崎哲、同瓜生頼正の各証言、控訴人本人(当審)」と改め、同四五枚目表四行目「田代部長」の前に「教官会議の議長である」を加え、同四七枚目表一二、一三行目「前記田代証言及び田中証言によれば、」を『証拠(乙一四一、一四三、一四四、前記田代証言及び田中証言)によれば、岡山大学では、「学部・教養部および附置研究所に教授会を置く。」(岡山大学学則二七条)、「教授会には、当該学部の教授会の定めるところにより、助教授または専任講師を加えることができる。」(岡山大学教授会規程二条二項)と規定し、』と改め、同一三行目「教養部においては、」の次に『「必要があるときは、専任の助教授または講師を加えることができるが、教官の人事に関する事項を審議する場合は、この限りでない。」(教養部教授会議事規程二条ただし書)と規定し、』を加え、同裏三、四行目「審議することが申し合わせ事項として決定されており」を「審議する運営がなされており」と改め、同九行目「また」から同一三行目末尾までを削り、同一三行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「処分理由3につき、控訴人は縷々主張し(別紙一の第二・二・3、第三・三のとおり)、特に教官会議は法的意味での教授会ではない旨主張し、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、前同様、原判決の趣旨を正解しない控訴人の思い込みや独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、右認定判断を覆すに至らない。

右にいう会議の妨害とは、会議それ自体のみならず会議を開催しようとすること(開催準備段階)の妨害を含む趣旨であるし、右認定判断のとおり、教官会議の法的性質については、教授会の性質を有するものというべきである。

また、教授会は、学校教育法五九条一項に基づき設置された大学には必置の重要な機関であり、学部等の重要事項を審議・決定するほか、大学管理機関として、教育公務員特例法に定められた事項を決定する権限を有するとされており、岡山大学教養部では、前記のとおり、専任講師は教授会たる教官会議の構成員とされている。したがって、専任講師である控訴人は、教官会議に出席し、その審議に参加することは職務であるといわなければならない。」

4  原判決四八枚目表二行目の括弧書きの次に「(以下これを「処分理由4」という。)」を加え、同一〇行目「同月一二日」を「同年一月二二日」と原判決四九枚目表一行目「破壊した」を「外した」と各改め、同五一枚目表一行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「処分理由4につき、控訴人は縷々主張し(別紙一の第二・二・4、第三・四のとおり)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、前同様、原判決の趣旨を正解しない控訴人の思い込みや独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、到底右認定判断を左右するに足りない。」

5  原判決五一枚目表二、三行目の括弧書きの次に「(以下これを「処分理由5」という。)」を加え、同一〇行目「主張1(一)(5)の各事実」を「主張1(一)(5)(ア)の事実」と改め、同一二行目「なお、」から同裏八行目末尾までを「しかしながら、右教室の落書が控訴人によるものと断定することはできない。」と改め、同裏一一行目「、汚損行為」を削除し、同一三行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「処分理由5につき、控訴人は縷々主張し(別紙一の第二・二・5、第三・四のとおり)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、右主張1(一)(5)(ア)の事実に関する限り、到底右認定判断を左右するに足りない。」

6  原判決五二枚目表一行目の括弧書きの次に「(以下これを「処分理由6」という。)」を加え、同三行目「昭和四八年」から同八行目「証言によれば、」までを「原審証人板野一男の証言及び弁論の全趣旨によると、昭和四八年二月一三日午後四時ごろ、控訴人が、教養部の野瀬助教授担当の英語の期末試験を実施中の教養部一〇五教室に入室し、印刷物を配布するとともに教卓上に生卵を置いたこと、」と、同一〇行目の「野瀬教授」を「野瀬助教授」と、原判決五二枚目裏四行目「同月」から同一〇行目「ところ、」までを「原審証人入江啓太郎の証言及び弁論の全趣旨によると、同月一九日午後二時ごろ、教養部の入江助教授が教養部四〇五教室で、英語の期末試験として、録音テープを再生して英語の聴き取り試験を実施していたところ、」と各改め、同五三枚目裏四行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「処分理由6につき、控訴人は縷々主張し(別紙一の第二・二・6、第三・五のとおり)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、前同様、原判決の趣旨を正解しない控訴人の思い込みや独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、到底右認定判断を左右するに足りない。」

7  原判決五三枚目裏五、六行目の括弧書きの次に「(以下これを「処分理由7」という。)」を加え、同七、八行目を「(1)乙六二、六四の1ないし4、六五、六六の1ないし3、七〇の1ないし4、七一、七二の1ないし3、七三の1ないし4、七四、七五の1ないし3、原審証人田代嘉宏の証言(第二回)及び弁論の全趣旨によると、原判決摘示の被控訴人の主張1(一)7の事実がみとめられる。」と改め、同五四枚目裏五行目末尾に「したがって、教授会は、教育及び研究に付随する業務について、教員に業務を割り当てることもできるものと解するのが相当である。」を、同一〇、一一行目「解すべきである。」の次に『大学については、大学設置基準(昭和三一年文部省令第二八号)で、「大学は、一の授業科目を履修した者に対しては、試験の上単位を与えるものとする。」(三一条、本件処分当時の条文、以下同じ。)、「卒業の要件は、大学に四年以上在学し、次の各号に定める単位を含め、一二四単位以上を修得することとする。」(三二条一項)などの卒業要件単位数が規定されている。これらの規定を受けて、岡山大学では、岡山大学学則(乙一四一)で、「授業科目を履修した者に対しては、試験のうえ単位を与えるものとする。」(三八条一項)、「報告書・論文その他をもって前項の試験にかえることができる。」(同条二項)、「卒業要件としての単位は、次の各号に定める単位を含めて合計一二四単位以上とし、教養課程については教養部、専門課程については各学部の定めるところによる。」(三八条一項)と規定し、教養部で開設している一般教養科目、外国語科目及び保健体育科目についても、合計五二単位が卒業要件の単位とされている(理学部は四八単位、医学部は基礎教育科目を含め七九単位)。さらに、教養部では、岡山大学教養部規程(乙一四五)で、「履修の承認を受けた授業科目の単位修得の判定は、試験または報告書および平常の成績等を考慮して授業担当教官がこれを行なうものとする。」(七条)、「試験は、原則として学期末に期間を定めて行ない、その試験の時間表は公示する。」(一〇条一項)と規定している。

以上の各規定から、試験は、学生の教育を行う大学及び学部並びに教養部においては、卒業の要件としての単位の修得にかかわる重要な業務である。特に、全学の学部一、二年次の学生の教育を担当している教養部では、期末試験の受験学生も多く、多くの試験監督者が必要となる。』を、同一三行目「委員会において、」の次に「その実施計画を定め、試験監督の従事回数及び時間表については、教養部の重要事項として、」を、同五五枚目表四行目「決定し」の次に「、この決定に基づいて、教養部内の教員に対する具体的割り振りは、教養部教務係で行い、教養部長の決裁を受け、教養部長名で教員に通知し、命じ」を各加える。

8  原判決五五枚目表一二行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「処分理由7につき、控訴人は縷々主張し(別紙一の第二・二・7、第三・六のとおり)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、前同様、原判決の趣旨を正解しない控訴人の思い込みや独善的主張あるいは独自の見解に過ず、到底右認定判断を左右するに足りない。

なお、教養部の期末試験の監督業務について付言すると、前記認定のように、岡山大学の教養部にとって、学生の教育という本来の目的に伴い生ずる期末試験の監督業務について、教授会たる教官会議で決定した以上、当該業務は教員にとって職務となるものというべきである。

したがって、教養部長は、教養部に関する事項を掌理する立場にあるものとして(岡山大学学則一四条二項)、教官会議の決定事項等を執行するため、教養部の教員に対し、他の教員が担当する科目の試験監督について職務命令を発することができるものと解するのが相当である。」

9  原判決五五枚目裏一行目の括弧書きの次に「(以下これを「処分理由8」という。)」を加え、同二行目「原告が」から同四行目末尾までを「甲一一、一二、二六、乙五一の2、六二、当審における控訴人の供述及び弁論の全趣旨によると、控訴人が昭和四七年七月ごろから同四八年二月ごろにかけて教養部教務係掲示板に数回にわたり無断で掲示を行ったことが認められる。」と改め、同一一行目「ビラ」の次に「(控訴人の自筆である。当審・控訴人本人)」を加え、同一二行目「一六点」を削除し、同五六枚目表六行目「推認することができる」を「の疑いが濃厚であるが、当該掲示物とされる乙六一の1ないし16は一連のものとして提出されているところ、枝番号11ないし14には二月一日ないし二月二日付の検印があるから、右四枚は一月三一日の掲示物とは認めがたく、これらを一月三一日に取りはがしたものと認定することはできず、ひいては一連のものであるその余の掲示物についても一月三一日に控訴人が取りはがしたものと断定することはできない。」と改め、原判決五六枚目裏一行目「学部共通細則」、同四行目と同九行目の各「右細則」の次に「及び学内慣行」を加え、同一二行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「処分理由8につき、控訴人は縷々主張し(別紙一の第二・二・8、第三・七のとおり)、控訴人(当審)は同旨の供述をするところ、前記認定のように掲示物取りはがしの件は控訴人所為とは認められないが、無断掲示については、控訴人の思い込みや独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、右認定判断を左右するに足りない。」

10  原判決五七枚目表二行目「(一)ないし(八)の各行為」を「(一)ないし(四)、(五)の(ア)、(六)、(七)、(八)の無断掲示の各行為(即ち、本件処分理由の内から、(五)の(イ)の落書による汚損行為、(八)の掲示物無断取りはがし行為を除外したもの。)」と改め、同五行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「控訴人は、その信念に基づく行動は非行に該当しない旨主張し(別紙一の第四・一のとおり)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、控訴人の独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、採用しえない。」

11  原判決五八枚目表六行目「そして、」の次に「乙一四一、」を、同一一行目「教養部長が」の次に「教養部に関する事項を掌理する(岡山大学学則一四条二項)立場において」を各加え、同裏一三行目「行為のうち、」の次に「(1)」を、同五九枚目表七行目「また、」の次に「(1)」を、同裏一二行目「前記1(四)」の次に「(1)」を、同六〇枚目表二行目「前記1(四)」の次に「(1)」を各加え、同八行目「前記1(五)、(六)及び(八)」を「前記1(五)の(ア)、(六)及び(八)の無断掲示」と改め、原判決六〇枚目裏二行目「前記2」の次に、「(二)、」を加える。

12  原判決六一枚目裏五行目「昭和五四年」を「昭和四五年」と、同九行目「以上のとおりであるから、」を「以上のとおりであって、本件処分理由のうち右落書による汚損行為、掲示物無断取りはがし行為の二事由については、控訴人の所為とは認められないが、右を除外したその余の処分理由の存在が認められ、これのみでも控訴人を懲戒免職するに充分であって、裁量を誤ったものとは認められないから、」と各改め、同一〇行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「控訴人は非違行為に対する法令の適用について縷々主張し(別紙一の第二・二・10ないし14、第四のとおり)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、控訴人の思い込みや独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、右認定判断を左右するに足りない。

なお、教養部長が上司にあたるや否やについては既に判示したとおりであるが、なお付言すると、岡山大学学則(乙一四一)によれば、岡山大学では、「教養部長は、教養部に関する事項を掌理する。」(一四条二項)と規定され、そして、学校教育法第五九条第一項に基づき、教養部に重要事項を審議するため、教授会が置かれ(二七条)、教養部における基本的事項に関しては、全学的な組織である教養部連絡運営委員会(二九条)において決定するほか、教養部内の事項に関しては、前記の区分に従って、教授会または教官会議において決定するものとされ、教養部長は右の各決定の執行を含む教養部に関する事項を処理する職責と権限を有するものと解される。すなわち、教養部長は、教養部の他の教員に対し、研究及び教育に関して上司たる地位に立つことはないものの、研究及び教育に付随して生ずる各種の職務に関しては、教授会ないしは教官会議の決定等の執行を含め、教養部に関する事項を掌理する立場から、上司の地位に立つものと解される。

したがって、教養部長は、教養部の他の教員に対し、右の限度で、上司として、職務上の命令や警告・注意を発し、あるいは督促・問い合わせ等を行うことができるものと解すべきであって、そのように解したからといって教員の研究及び教育の自由を損なうことはないものと解するのが相当である。」

13  原判決六三枚目裏一三行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「控訴人は、審査説明書の交付に関し縷々主張し(別紙一の第二・二・15ないし17、第五・一)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、原判決の趣旨を正解しない控訴人の独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、右認定判断を左右するに足りない。」

14  原判決六四枚目表一一行目「瓜生頼正」の次に、「、同城崎哲」を加え、同六五枚目裏一〇行目「〈会長片山恵子〉」を「(会長片山恵子)」と改め、同六六枚目裏五行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「控訴人は、陳述の機会を与えなかったとして縷々主張し(別紙一の第二・二・18、第五・二)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、原判決の趣旨を正解しない控訴人の独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、右認定判断を左右するに足りない。」

15  原判決六七枚目表六行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「控訴人は、処分説明書の交付に関して縷々主張し(別紙一の第二・二・19、第五・三)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、原判決の趣旨を正解しない控訴人の独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、右認定判断を左右するに足りない。」

16  原判決六八枚目表一〇行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「控訴人は、憲法二三条(大学の自治)の解釈につき縷々主張し(別紙一の第二・二・20ないし22、第五・四)、控訴人(当審)は同旨の供述をするが、原判決の趣旨を正解しない控訴人の独善的主張あるいは独自の見解に過ぎず、右認定判断を左右するに足りない。」

二  原審における訴訟手続(控訴理由1ないし4)について

記録によれば、本件第一審は、昭和五〇年五月一日に第一回口頭弁論期日を開き、その間原告申請証人七名、被告申請証人七名を尋問し、昭和六一年七月二日の第四三回口頭弁論期日に結審し、一一年余の長期にわたる審理期間を要したものであるが、昭和六一年七月二日の期日は裁判所の職権による原告本人尋問の予定であったところ、昭和六一年六月六日付で原告代理人から期日変更願が出され、これに関する原審裁判所からの意見聴取に対し、翌七日午前九時に被告代理人から期日変更に同意できない旨の回答がなされたこと、昭和六一年七月二日当日は原告本人・原告代理人とも裁判所へ出頭せず、原審裁判所は、同日、原告本人尋問の採用を取消して結審し(判決言渡期日は追って指定。昭和六一年七月二日当日控訴人が作成した書面及び追加提出の診断書によれば、控訴人が裁判所へ出頭することができない体調であったとは認めがたい。)、その後、原告代理人から昭和六一年七月一一日付弁論の再開申立がなされたが、原審裁判所は、同年八月一日職権を発動しない旨決定し、昭和六二年三月一八日、判決言渡期日を昭和六二年三月二五日と指定したこと、原告代理人は、昭和六二年三月二四日付で原審裁判官三名の忌避申立をしたところ、原審裁判所は、昭和六二年三月二五日、右忌避申立は、訴訟遅延の目的でなされたものであることが明らかであるとして、これを却下して判決を言渡したものであることが認められる(なお、控訴人は昭和六二年三月二五日にも忌避申立したと主張するが、記録上明らかでない。)

右のような原審の訴訟手続、審理経過全体を通観すると、原審裁判所が、昭和六一年七月二日に原告本人尋問を打ち切って結審し、弁論を再開しなかったのは、相当であって、原判決には一部の事実誤認があるけれども、それ以外に原判決及び原審における訴訟手続には、所論の違法、審理不尽はない。

三  よって、原判決は結局相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 高山健三 渡邊雅文 池田光宏)

別紙省略

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